出血性腸症候群(HBS)のワクチンによる予防対策と発症牛における輸血治療

平成26年度、島根県獣医学会にて、

「出血性腸症候群(HBS)のワクチンによる予防対策と発症牛における輸血治療」について発表してきました。

平成25年度獣医学会にて発表した、HBSの疫学調査と罹患牛からのClostridium perfringensの分離状況より、

予防対策として、牛クロストリジウム感染症5種混合トキソイド(京都微研)の接種を行い、その効果について考察しました。

また、現在、HBSの治療方法として、外科治療、内科治療が行われています。

内科的治療として、脱水、電解質の補正としての輸液、抗生剤の投与、トラネキサム酸、カルシウム剤の投与等が

行われていますが、治癒率は低く、今回、新たに輸血療法を行い、症例をまとめました。

 

以下、抄録と発表ファイルです。

 

出血性腸症候群(HBS)のワクチンによる予防対策と発症牛における輸血治療

○原知也、長崎雄太、下永満展、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介

発表者所属:(株)益田大動物診療所

1.  はじめに:我々はH25年度島根県獣医師学会において出血性腸症候群(Hemorrhagic Bowel Syndrome、以下HBS)の疫学調査とClostridium perfringens(以下Cl.perfringens)の関与について報告した。前回の報告でHBSの主因がCl.perfringensと特定し、Cl.perfringensワクチン接種による予防対策について取り組んだ。今回、その予防対策の結果とワクチン接種後のHBS発症牛に行なった輸血治療において、良好な結果を得たので、その概要を報告する。

2.  方法①H25年6月にワクチン接種し始め、接種した20頭においてワクチン接種時、接種後21日、90日、180日、270日時点において採血を行い、Cl.perfringens抗体価の測定を行なった。また、ワクチン接種前後のHBS発症率を比較した②HBS発症牛に対して山形NOSAIプログラム(Ca剤を含む大量補液、抗生剤、トラネキサム酸)による治療法と輸血治療の治癒率を比較した。

3.  結果①ワクチン接種による抗体価は接種後21日で著しく上昇し、その後減少したが、270日後の時点において20頭中18頭で400倍以上の抗体価を維持した。この結果HBS発症率は接種前が0.61%に対し、接種後が0.28%となった。②HBS発症牛4頭において、輸血治療を行なったところ、3頭が治癒した。これは山形NOSAIプログラムによる治癒率が22%(2/9)に対し、75%(3/4)となり、高い治癒率を示した。

4. 考察: Cl.perfringensワクチン接種は、HBSの予防対策として有効だと考えられる。腸管内でのCl.perfringens増殖による毒素産生は、腸管細胞を破壊、出血により、敗血症にまで進行する。毒素血症由来の敗血症は、線溶系抑制型DICを引き起こす。腸管内に形成された血餅が、腸管内を閉塞させ、腸管運動抑制、血液循環低下を引き起こし、致死に至る。輸血療法は、血液循環を保ち、止血により減少した血小板と抑制された線溶系を補充し、血餅を溶解させる為、治癒率が上昇したものと考えられる。

出血性腸症候群(HBS)のワクチンによる予防対策と発症牛における輸血治療

 

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