BRDC起因細菌の浸潤状況およびその薬剤感受性の調査

7月31日 島根県獣医学会が松江市にて開催されました。

診療所から3題の発表を行いました。

 

『BRDC起因細菌の浸潤状況およびその薬剤感受性の調査』と題し、

定期的に行っている検査成績をまとめ、発表しました。

定期的な薬剤感受性試験は、BRDC発症牛に対し、効果的な治療を行う上で重要な資料となります。

飼養環境の整備、ワクチネーションの実施、効果的な治療を行い、

BRDCによる牛群の損耗を最小限に抑えるよう日々診療しています。

 

以下、抄録と発表ファイルです。

 

BRDC起因細菌の浸潤状況およびその薬剤感受性の調査

○長崎雄太、原知也、下永満展、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介

発表者所属:(株)益田大動物診療所

 

1.はじめに:牛呼吸器症候群(以下BRDC)は消化器感染症と共に哺育・育成牛にとって重要な疾病と位置付けられる。BRDCはまずウイルス感作による免疫抑制がおこり、それに続きBRDC起因細菌が増殖することにより成立すると考えられる。今回、BRDCの治療指針とすべく起因細菌の浸潤状況の調査および薬剤感受性試験を実施したのでその概要を報告する。

2.材料・方法: 試験対象農場は哺育・育成・肥育一貫牧場とした。①鼻腔スワブ採取による細菌の検出:H21~H25の間計4回実施し、臨床上健康な、2~7カ月齢の交雑種を計80頭用いた。②薬剤感受性試験:Mannheimia属、Pasteurella属、Histophilus属はディスク拡散法による阻止円の直径で判定した。判定対象薬剤はPCG、ABPC、CEZ、KM、OTC、FF、OBFX、ERFX、TSとした。Mycoplasma属は微量液体希釈法によるMIC値で判定した。判定対象薬剤はOTC、FF、ERFX、TS、TMSとした。③耳の下垂、外耳から漿液の滲出を認めた牛の発生調査:H21.4~H26.3の期間に導入した哺育牛を対象として、発生率を調査した。 

3.結果:①細菌の検出率:Mannheimia.haemolytica(以下M.haemolytica)は55%、Pasteurella.multocida(以下P.multocida)は42.5%、 Histophilus.somni(以下H.somni)は5%、Mycoplasma.bovis(以下M.bovis)は45%の検出率を示した。②薬剤感受性試験:M.haemolyticaに対してABPC、CEZ、KM、OTC、FF、OBFX、ERFXは高い感受性を示した。TS、PCGは低い感受性を示した。P.multocidaH.somniは、M.haemolyticaとほぼ同様の感受性の傾向を示した。M.bovisに対してはOTC、FF、ERFX、TS、TMSのMIC50がそれぞれ50、6.25、0.39、50、>100の値を示した。③耳の下垂、外耳から漿液の滲出を認めた牛の発生率は年々増加する傾向にあった。

4.考察:BRDC起因細菌は健康な子牛の鼻腔スワブから高率に検出された。従って、上部気道の常在菌であると考える。ウイルス感作によりそれら常在細菌が増殖し、呼吸器症状が発現し、BRDCが成立する。また臨床症状よりM.bovisの関与が疑われる症例が年々増加傾向を示している。これらのことから抗生物質の選択については感受性試験の重要性が高まっている。今後も感受性試験を定期的に継続し、抗生物質の適切な使用に留意したい。

 

BRDC起因細菌の浸潤状況およびその薬剤感受性の調査

 

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