H27年度島根県獣医学会にて
演題「Mycoplasma bovisの関与が疑われた巨大腫瘤の摘出症例」を発表してきました。
以下、抄録とスライドを掲載します。
Mycoplasma bovisの関与が疑われた巨大腫瘤の摘出症例
○長崎雄太、原知也、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介
発表者所属:(株)益田大動物診療所
1.はじめに:牛の腫瘤は放線菌症やアクチノバチルス症において発生することがよく知られている。しかし腫瘤形成にMycoplasma bovis(以下M.bovis)が関与した報告は少ない。今回耳下から頸部にかけ腫脹を呈した牛より摘出した腫瘤からM.bovisが検出されたので、その概要を報告する。
2.材料及び方法:
(ア) 症例:H26.1.3生まれの黒毛和種の去勢牛で、H26.9.16県内の酪農場より導入した。導入前の育成期に呼を器疾患で複数回の治療履歴があった。
(イ) 臨床経過:導入後より耳下から頸部にかけ腫脹および気管喘鳴音を認め、発熱を繰り返した。H26.12.14耳下腫脹部を切開して排膿および洗浄を実施した。以降、洗浄を続けるが切開創よりの排膿は継続した。H26.2.16手術を実施し、咽喉頭左側部より小児頭大の腫瘤を摘出した。原因検索のため、腫瘤内より採取された貯留液について、細菌学的検査を実施した。
(ウ) 細菌学的検査:直接鏡検及び細菌培養検査を実施した。分離菌についてPCRを実施した。
3. 結果: 直接鏡検にて放線菌症および牛アクチノバチルス症でみられる菊花状ロゼットは確認できなかった。分離菌からM.bovisの特異的遺伝子を検出した。
4.考察: 本症例は腫瘤内貯留液からM.bovisが単独分離されたことから、耳下から頸部にかけての腫瘤形成にM.bovisが関与した希少な症例であると考えられる。感染経路については育成期に呼吸器疾患を罹患した経過から上部気道で増殖したM.bovisが耳管咽頭口より中耳および内耳に連絡し、側頭骨岩様部より組織波及的に感染した可能性が考えられる。