えーっ!。出血が止まらない。出血箇所も分からない?。産道裂傷奮闘編。

 先日の午後、メイプル牧場のスタッフより
「先ほど、産んだ牛の産道から出血が止まりません。」
との緊急TELがあり、足立Vetが急行します。
 行ってみると現場は血の海で、手を消毒し、母牛の産道に手を入れてみると、膣内は鮮紅色の大量の血餅(血の塊)が確認でき、それを取り除くと血液がドクドクと流れ出てきます。
 圧迫止血を期待して、膣内にタオルを充填していきます。 
 母牛は既に、血液減少性のショック状態のため、表情は虚ろで、全身は脱力し起立できないでいます。又、結膜や口腔粘膜は蒼白でかなりの出血量が伺えます。生命の危険を感じます。
 止血のためのタオルを取り除き、早速、処置に入りますが膣内の出血箇所が分かりません。
 膣内の右下奥に長さ25cm、深さは手首が余裕で入ってしまう大きな裂傷があります。
 出血はおそらくここでしょう。
 5日前にも、同じ様に産道を裂傷し、大量の出血がみられた母牛がいましたが、その時の出血部位は陰門より約20cmの比較的手前で、出血箇所もポケット状に損傷した粘膜から、血液を噴き出している血管を、手探りでも容易に確認でき、目視下でなくても、何とか縫合し事なきを得ました。
 しかし今回の症例は、噴き出している血管は確認できず、深く裂けた傷の奥から出血しているようです。
 こうしている間にも、膣から血液が流れ出てきます。止血を急がねばなりません。
 生理食塩水に抗生物質と血管収縮作用のあるエピネフリンを混和したものを膣内に流し込みます。
 ピンポイントで血管を結紮縫合できないので、両手を膣内に挿入し、手探りで大きく裂けた膣粘膜を吸収糸で縫合します。なにぶんにも、膣内は狭く、術部を目で確認できないため、傷の状態を頭の中で、三次元的に再現し、慎重に術式を進めていきます。
 と同時に、喪失した血液成分を補ってやらなければなりません。素早く供血牛(血液をくれる牛)を選抜し、輸血を行います。
 やや時間がかかりましたが、無事縫合完了。
 輸血も功を奏したのか、母牛も起立し、歩様もしっかりしています。
 
 数日経過しましたが、母牛は発熱もなく元気にしています。
  
 北海道から購入した初産牛が数十頭いるので、次の発生がちょっと怖いです。

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