FPD(DR)を用いて確定診断を行った球節脱臼

平成29年度島根県獣医学会

FPD(DR)を用いて確定診断を行った球節脱臼
○原知也、加藤圭介、山本哲也、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介
発表者所属:(株)益田大動物診療所

1. はじめに: 今回、突然の跛行を示した牛に対してFPD(DR)を用いて画像診断を行い、球節脱臼と診断し、非観血的に整復し、良好な結果を得たのでその概要を報告する。
2. 方法及び結果: ポータブルX線撮影装置はPX-20BT(Kenko Tokina)を用い、X線画像診断装置は、DR-ID300(富士フィルム)を用いた。ホルスタイン種、去勢、7ヶ月齢の牛で、右前肢球節が内側に屈曲し、関節周囲の腫脹が認められ、罹患肢は全く負重せず、重度の跛行を示した。キシラジン鎮静下で、左側横臥にて保定し、FPDにて画像診断を行った。FPDにて、球節の完全脱臼及び基節骨の剥離骨折を確認した。球節遠位端をロープにて固定、牽引し、用手にて外側に整復した。整復が達成されると、基節骨と中手骨が合わさる骨性の衝撃が伝わった。整復後、FPDにて脱臼の整復を確認し、ギプスにて外固定した。固定19日後に再度FPDにて、脱臼の治癒及び剥離骨折部の骨癒合が進んでいることを確認し、ギプス除去した。ギプス除去後、罹患肢は負重し、ギプス除去後7日目には全く跛行は見られなくなった。
3. 考察: 本症例において、2ヶ月が経過した現在も再発は見られず、順調に肥育中である。発症後、迅速かつ的確な診断と処置が出来た。産業動物の獣医療において運動器疾患に遭遇する機会は多い。しかしながら、その多くは跛行診断、触診等の診断に依存しているのが現状である。FPDは煩雑な現像処理、暗室も必要とせず、連続撮影も可能であり、撮影後直ちに画像を確認することが出来る。また、得られた画像処理システムにて、より鮮明な画像を得ることが出来る。FPDの利用は農場等が臨床現場となる産業動物獣医療において、迅速かつ的確な診断が可能となり、利用価値は極めて高い。

 

FPD(DR)を用いて確定診断を行った球節脱臼

 

 

 

 

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