超音波画像にて確定診断に至った牛泌尿器疾患4症例

平成28年度島根県獣医学会

超音波画像にて確定診断に至った牛泌尿器疾患4症例

○長崎雄太、山本哲也、原知也、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介

発表者所属:(株)益田大動物診療所

 

 

1.はじめに:今回、臨床所見、血液・尿検査より泌尿器疾患が存在すると診断した4例について、超音波画像を用い、その罹患部位を特定することで、確定診断に至ったので以下その概要について報告する。

2.材料・方法:超音波検査はHS-101V(本多電子株式会社)を用いて、左腎と膀胱の経直腸検査、右腎の経皮的検査を実施した。(症例①の右腎の経皮的検査にはFAZONE CB-V(FUJIFILM)を用いた。)症例①~④は尿検査で尿潜血、尿蛋白反応全て陽性であった。症例①:黒毛和種肥育、去勢、19ヶ月齢。臨床所見:T39.9℃、緑色水様下痢、乏尿、膀胱拡張(-)。血液検査:TP=10.1、AST>1083、BUN=63、Crea>13.6。尿沈査に結石多数。症例②ホルスタイン種乳牛、雌、54ヶ月齢。臨床所見:T38.8℃、乳量低下、削痩、左腎臓腫大。血液検査:TP=8.9、AST>1083、BUN=51、Crea=3.9。症例③:黒毛和種繁殖、雌、95ヶ月齢。臨床所見:T38.8℃、削痩、頻尿、左腎臓腫大。血液検査:TP=9.8、AST>1083、BUN=81、Crea>13.6。症例④:交雑種肥育、去勢、13ヶ月齢。臨床所見:T40.0℃、褐色停滞便。血液検査:TP:9.8、AST>1083、BUN=30、Crea=3.1。

3.結果:症例①腎杯の拡張、および音響陰影を伴うエコー源性の結石を認めた為、尿石症(腎結石)と診断した。症例②腎杯の拡張、および高エコー性の浮遊物を腎杯、膀胱において認めた為、化膿性腎炎と診断した。症例③尿貯留により拡張した腎杯、萎縮した腎実質を認めた為、水腎症と診断した。症例④腎正常、膀胱壁肥厚、高エコー性の膀胱内浮遊物を認めた為、膀胱炎と診断した。それぞれの診断に基づき治療を行い、症例①~③はBUNが低下した段階で出荷した。症例④は治癒し、現在肥育中である。

4.考察:臨床所見、血液・尿検査所見より泌尿器疾患が存在すると診断した症例は、超音波画像によりその罹患部位を特定することで、確定診断でき得る。また超音波画像により、患畜の病態と病勢を把握することは、予後判定の指標となり、畜産農家の生産性向上に資すると考える。

 超音波画像にて確定診断に至った牛泌尿器疾患4症例(発表ファイル)

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